「流行のMCバトルを見るようになって、その流れで日本語ラップは聞くようになったけど、本場アメリカのヒップホップのことは全くわからない。興味はあるけど、あまりにも膨大な要素の前に、一体どこから手を付ければ良いんだろう?」
あなたはそんな思いを抱えていませんか?
今回おすすめするこの本は、そんなあなたのような方に向けて間違いなく最良の1冊、「文化系のためのヒップホップ入門」です。
アメリカのヒップホップを1から知りたい人におすすめの本です。
私も本書が発売された2011年当時、日本語ラップを聞き始めて数年で有名どころを一通り聴き終え、アメリカのラップについて知りたいけど、何から聞けばいいのか全くわからずに立ちすくんでいました(笑)
そんな時に本書が発売され、アメリカのヒップホップの成り立ちやその後の流れを理解しつつ、ココで語られている曲を片っ端から聴くことで、大まかなマップが頭の中に作られ、そこからは興味の赴くままに楽しむことが出来るようになりました。
あなたもこの1冊を読むだけで、ニューヨークのブロンクスで産声を上げてから50年以上が経過した、アメリカのヒップホップの歴史と流れが一通りわかります。
周りの仲間に差をつけて、ドヤることも出来るでしょう(笑)
ヒップホップの歴史について書かれた良書は、この他にもいくつもあります。
おそらく日本で出版されたその類いの本は、ほぼ全て目を通してきました。
では、そんな私がなぜこの本が最良の1冊だと言い切るのか?
ポイントを3つにしぼって解説していきますね。
雰囲気が伝わるように、本書内からの抜粋も参照としてあげさせて頂きます。
目次
この本をおすすめする3つのポイント
その1 : 著者2人による軽快な会話形式で進むので、楽しみながらサクサク読み進められる
・本作は、アメリカの音楽や映画などに詳しく長年アメリカのヒップホップを追ってきたライターの長谷川町蔵さんと、アメリカの文学やポピュラー音楽を専門する研究者の大和田俊之さんの対談といった形で進められます。
冗談を交えつつ楽しい感じのやり取りで進むので、いわゆる「知識を語るだけの専門書」のような取っつきにくさが無く、楽しんで読んでいる内に自然と知識を吸収できます。
例えば、西海岸で始まったギャングスタラップが1990年代中盤あたりから音楽性が広がり、歌ものR &Bとの音楽的な境目が無くなっていった事を説明している場面では
長谷川 : サビはラップではなく女性シンガーが歌っていますけど、このへんからなんですよ、R &Bシンガーがサビを歌うっていうパターンが確立するのは。
大和田 : たしかにこのサビはむさ苦しい男のラップよりも女性に歌わせたいですよね。
ちなみにDJクリックはギャング出身ではないんですか?
長谷川 : クイックはブラッズのメンバーだからギャングです。
日本のヤンキーのファンシー好きみたいに、西海岸のギャングのメロウ好きってのがあるんですよ。
大和田 : ヤンキーのメロウ好き! たった今ギャングスタ・ラップの本質が分かった気がします(笑)。
良い喩えが思いつかないんですが、あの、何でしたっけ、ET-KINGの<一生一緒にいてくれYO>?
長谷川 : それ三木道三で、タイトルは<一緒にいてくれやー>です。
ぜんぶ間違っているじゃないですか(笑)。
それはさておき、こうしたメロウな曲を使うことで、今まで「喜怒」しかなかったヒップホップに「哀楽」が加わったんです。
引用 : 「文化系のためのヒップホップ入門」/長谷川町蔵 大和田俊之
ちなみにこれは、DJクリックの<Sumeer Breeze>(1995)について語った箇所です。
・また、ここ数年でハマって聴き始めたという大和田さんが、知識豊富な長谷川さんに質問をしてレクチャーしてもらうという図式をとっている為、知識ゼロから読みすすめるという読者にとっても読みやすくなっています。
その2 : 具体的なラッパーや曲名をガンガン出しながら語られている
・会話の中では歴史的な経緯の説明もされますが、基本的には著者2人がその時代の曲を次々と聴きながら語るという感じなので、読者も実際にyoutubeやSpotifyなどのストリーミングサービスでその曲を検索して聞きながら読み進めることで、語られてる内容も体感としてスッと入ってきますし、自然と色んなラッパーや曲の知識がつけられます。
例えば、1987年にニューヨークで始まった、曲を介した有名なバトル、「ブリッジ・バトル」の話題の箇所では
長谷川 : この頃からラッパーのバトルがレコードを介して行われるようになってくるんです。
初期のレコードによるバトルに、ブロンクスVSクイーンズの「ブリッジ・バトル」というのがあって。
大和田 : ついに本物のバトルが!
長谷川 : 興奮しないでください(笑)。
さっき話に出て来たマーリー・マールがクイーンズ出身で、彼が率いる「ジュース・クルー」という集団が全盛を極めたんです。
その最中にメンバーのMCシャンが「クイーンズ最高!」みたいな地元賛歌の<The Bridge>(1987)というシングルを出したんですけど、これに対して、ブギーダウンプロダクションズのKRSワンが「クイーンズがヒップホップの故郷だと嘘を言っている」と解釈して、<South Bronx>(1987)というシングルを出してディスったわけです。
大和田 : 日本人にとっては「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」の出囃子としてもお馴染みの曲ですね。
ちなみに「ディス」っていう言葉が定着するのはこのころでしょうか?
長谷川 : そうです。日本語で言うなら「口撃」ですかね?
引用 : 「文化系のためのヒップホップ入門」/長谷川町蔵 大和田俊之
ちなみにここで出てくる<The Bridge>(1987)と<South Bronx>(1987)はこんな感じの曲。
・また各部の巻末には、その時代を象徴する重要アルバム-5つの時代の合計100作品のCDガイドが付いているので、より深く掘りたい読者にとっての最良のガイドとなってくれます。
今でこそストリーミングサービスでアルバム全体もフルで聴き放題ですが、当時はそんなものが無かったので、愚直な自分はせっせとCD屋に通ってはこのガイドに載っている作品を買いまくって聴きあさっていました。今の時代がホント羨ましい(笑)
その3 : ヒップホップの楽しみ方を身近なものに置き換えて説明してくれるので分かりやすい
・本書は主に後半部で「ヒップホップの本質とはどういうものなのか? どんな風に捉えると、より楽しめるのか?」についての指針も示してくれます。
その例え方が秀逸で面白く、何より本質を理解する上で分かりやすいのです。
第6部「ヒップホップとロック」では、ヒップホップをロックと比較することで、ヒップホップの性質をあぶり出す試みをしています。
例えば、ロックファンは新たなオリジナルを生み出すような天才という「個人」に注目するのに対して、ヒップホップファンはヒップホップという「場=シーン」に注目しているという論を展開している場面では
大和田: ロックの場合は「俺はボブ・ディランしか聴かない」というようなファンも多いですよね。
長谷川 : 「俺はKRSワンしか聴かない」なんて言ってるヒップホップ・ファンはいません。居たら格好いいけど(笑)
大和田 : ロックは天才がいないとシーンが成り立ちませんから。
長谷川: ヒップホップは、シーンを天才が牽引するというよりは、みんながトップを争ってボトムからあがっていく感じなんですよ。
才人の成果はシーンに還元されて共有財産になっていく。
トップランナーがコケても、成果はボトムに還元されているから、シーンのレベルは常に上がり続けるんです。
引用 : 「文化系のためのヒップホップ入門」/長谷川町蔵 大和田俊之
・また第7部「ヒップホップの楽しみ方」では、ヒップホップを聴き始めたリスナーが、これからどのようにヒップホップを捉えるとより楽しめるのかについて語られています。
このパートは先の6部と合わせて、アメリカだけに限らず日本のヒップホップを聴く上でも役立ちます。
長谷川さんは日本人がすでにヒップホップ的な楽しみ方をしているエンタテイメントが3つあるとしています。
その3つとは「少年ジャンプ」「プロレス」「お笑い」です。
自分も意識せずに自然とそのような楽しみ方をしていたので、この3つの説明を読んで非常に納得しました。
例えば、「お笑い」との共通項を、ダウンタウン松本人志を例に出して語っている場面では、
長谷川 : あの人もラッパー的ですよ。
「すべらない話」って完全に仲間内でサイファーを作ってフリースタイルをやっているノリですよね。
あとダウンタウンにおける今田・東野とか、ウンナンにおける出川哲朗の存在ってメインソースの取り巻きだったナズや、EPMDの舎弟だったレッドマンに存在が近いと思うんですよ。兄貴分の番組でちょっとずつ顔出してきて、だんだん自立して行ったあたり。
大和田 : フックアップされて、客演もこなすようになる。
長谷川 : で、ピン立ちできるようになると。まあ、出川にナズ並みの才能があるとは言わないけど(笑)
大和田 : でもたしかにお笑い=ヒップホップっていう比喩はわかりやすいなあ。
長谷川 : XXLマガジンが毎年、その年有望な新人を10人ピックアップして「10 Freshman」っていうミックステープを出しているんですけど、それってM-1っぽいんです。M-1はとてもヒップホップ的なイベントでしたよね。
大和田 : たぶんお笑いは今、日本のあらゆる「場」のなかでもっともコンペティティブな状況にあるでしょうね。
引用 : 「文化系のためのヒップホップ入門」/長谷川町蔵 大和田俊之
⏫ こんな感じで知識だけではなく、ヒップホップというものの捉え方や楽しみ方のレクチャーなんかもしてくれます。
まとめ
・いかかでしたか? 知識の「お勉強」って感じの堅苦しさがなく、読み物として楽しんでる内にアメリカのヒップホップの流れが理解出来そうではありませんか?
冒頭の繰り返しになりますが、アメリカのヒップホップの歴史について知りたいなら、本書が最良の1冊だと思います。
何となく把握している方も、本書を読めば流れとしてキッチリ理解できますし、新たな発見もたくさんあるのではないかと思います。
構成としては、第1部「ヒップホップの誕生」第2部「イーストコースト」第3部「ウエストコースト」第5部「ヒップホップ、南へ」で歴史全体の流れを語り、第4部「ヒップホップと女性」と第6部「ヒップホップとロック」、第7部「ヒップホップの楽しみ方」は流れとは独立した番外編的な感じになっています。
番外編はどこから読んでも大丈夫なので、歴史編の1→2→3→5部を読み進める中で箸休め的に読むのもアリです。
最後に言うのもナンですが、1つだけ嘘を付きました。
アメリカのヒップホップの歴史が全てわかる! と言いましたが、2011年出版の本ですので、それ以降については載っていません(笑)
この本の最後は、いわゆるヒップホップの音楽的な一ジャンルである「トラップ」の全米規模での大爆発の直前で終わっています。
2000年代のアトランタを中心とした南部では既に広がっていき、本書の第5部で「ダーティー・サウス」などと呼ばれて紹介はされていますが、爆発寸前という時期までです。
ですが、本書の好評を受け「文化系のためのヒップホップ入門」シリーズが、2012年〜2014年までを扱った第2弾、2015年〜2018年までを扱った第3弾と出ていますので、本書が気に入った方は読み進めはいかがでしょうか。
どちらも読みましたが、第1弾となった本書と同じく素晴らしい内容でした。
・他の記事では、日本語ラップの歴史を1冊で学べるすごいディスクガイドや、MCバトルの歴史を学べる本を紹介しています。
興味がある方は、こちらからどうぞ。
「文化系のためのヒップホップ入門」をお得に読むには?
・紙の本にこだわらないのであれば、電子書籍で購入するのが圧倒的におすすめです。
本書は本文中で話題に出てきた曲を、youtubeやSpotifyで検索して聴きながら読みすすめるのがオススメなので、そういう意味でもデジタルデバイスで読むのに向いている書籍だとも言えますね。
最もお得なサービスは、「DMMブックス」の初回購入限定の90%OFFクーポンを使用する方法です。
こちらのクーポンの値引き上限は2000円までですので、価格1650円(税込み)のこの本をなんと165円で購入できます。
こんなお得なサービスは他では無いので、まだ「DMMブックス」を利用したことがない方は、是非ともこちらをご利用ください。
↓ ご利用の方はこちらから ↓
もう「DMMブックス」を利用したことがあるという方は、「DMMブックス」の次にお得な「ebookjapan」をオススメします。
「ebookjapan」を初めて利用する方に向けて、初回ログイン時に6回使える70%OFFクーポンが発行されます。
クーポン1回ご利用につき、値引き上限が1000円までですので、1000円引きの650円で購入できます。
↓ ご利用の方はこちらから ↓