近年のヒップホップシーンの盛り上がりによって、魅力的なラッパーが続々と表れてきました。
しかし、才能豊かなプレイヤーが増えたのはラッパーだけではありません。
楽曲に欠かせない“ビート”を作りだすビートメイカーの世界にも、未だかつて無いほど才能をもった人たちが集結しています。
「トラックメイカー」と呼ばれることもありますが、それは日本だけで世界的には「ビートメイカー」と呼ぶのが一般的です。
この記事では、2024年現在の日本のヒップホップシーンを支える重要な“ビートメイカー”を厳選して紹介していきます。
「最重要人物たち」12名と、詳しくは紹介はしませんが「触れておきたい人」をその他の項目で紹介します。
選出基準として、なるべく個人の好みを排除し“人気”や“影響力”、“音楽性の幅”を考慮するように心がけました。
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目次
前提知識
具体的なビートメイカーたちを紹介する前に、話の前提となる知識について少し解説しておきます。
ビートメイカーとは?
まず、ビートメイカーとは「ラップのためのビート(トラック)を制作する人」のことです。
ヒップホップの世界では、ビートを制作した人のことを「ビートメイカー」と呼んだり、「プロデューサー」と呼んだりすることがありますが、基本的には同じだと考えていいです。
ただ、両者の違いのニュアンスとして、
ビートを提供するだけでレコーディングに立ちあわない場合=ビートメイカー
レコーディングにも立ちあってディレクションまでする場合=プロデューサー
のように意図的に表記することもあります。ただ基本的には同じだととらえてもらって大丈夫です。
プロデューサータグとは?
もうひとつ前提知識として、「プロデューサータグ」について解説しておきます。
BADHOPの曲なら「JIGGのビートが聞きたいな」とか、Awichの曲なら『Husky Studio』とかよく耳にしますよね。アレの事です。
では、なぜビートを作った人はプロデューサータグを入れるのでしょうか?
個々人それぞれの理由もあるのでしょうが、基本的には以下のような感じです。
前置きが長くなりましたが、さっそく一人目から紹介していきます。
Chaki Zulu
ひとり目は“Chaki Zulu(チャキ・ズールー)です。
AwichやkZm、MONYPETZJNKMNなどが所属するクルー・YENTOWN(イエンタウン)のメンバーであり、彼らへのビート提供やプロデュースを手がけることで広く知られているプロデューサー/ビートメイカー/DJです。
ヒップホップが好きな人なら何度も『Husky Studio』や「You’re now connected to Chaki Zulu」という特徴的な“プロデューサータグ”に聞きなじみがあると思います。
ちなみに「Husky Studio」とは“Chaki Zulu”が運営しているプライベートスタジオの名前です。
2015年頃からYENTOWNのメンバーの活躍とともに一気にシーンのトッププロデューサーとなりました。
また、ヒップホップだけではなく加藤ミリヤやMIYAVIなどの他ジャンルのアーティストや、近年ではBE:FIRST、ももいろクローバーZまで手がけるなど、非常に幅広い音楽性を兼ねそなえている点も大きな特徴です。
代表曲・人気曲
・Awich - Remember feat. YOUNG JUJU
他にもあまりにも手がけたヒット曲が多すぎるので紹介しきれませんが、以下に一例をあげると
ごく一部でもこんな感じです。近年最大のヒットメイカーのひとりは間違いなく彼でしょう。
JIGG
「JIGGのビートが聞きたいな」というプロデューサータグでもおなじみの“JIGG(ジグ)”。
惜しまれながらも解散した“BADHOP”の楽曲で有名ですよね。
Kohh(現・千葉雄喜)の活動をささえた「GUNSMITH PRODUCTION」や、プロデューサーBACHLOGIC主宰のプロダクションチーム「ONE YEAR WAR MUSIC」 での活動を経てからは、主にBADHOPとの制作で広く知られるようになりました。
他にもJP THE WAVYをはじめ、ちゃんみなやRYKEYDADDYDIRTYなど数多くのラッパーに楽曲提供をおこなう、日本を代表するビートメイカーです。
代表曲・人気曲
・BAD HOP - Friends feat. Vingo, JP THE WAVY, Benjazzy, YZERR & LEX
ZOT on the WAVE
「Uh Wave Farewell」というプロデューサータグが印象的な“ZOT on the WAVE(ゾットオンザウェイブ)”
ちなみに「Uh Wave Farewell」というのは「お別れの時の手を振ってる動作」のことで、日本的に言うと「“バイバーイ”と手をふる」といったところでしょうか。
DJ TY-KOHが 盟友 YOUNG HASTLE, KOWICHIと共に設立した「FLY BOY RECORDS」の オリジナルメンバーとしても知られています。
2010年代後半からシーンのトップで活躍しているビートメイカーであり、ラップのディレクションまでを含めたプロデュース能力の高さにも定評があります。
代表曲・人気曲
・ ZOT on the WAVE & Fuji Taito - Crayon
KM
2020年以降に急速に名前をあげたビートメイカーが“KM(ケーエム)”です。
いわゆる“エモラップ”以降のオルタナティブなヒップホップを代表するビートメイカーとして知られる存在です。
2020年に(sic)boyとの共同名義で出したアルバム「CHAOS TAPE」で大きな脚光を浴びることに。
以降、LEXを客演に迎えたシングル「Stay」でさらに飛躍、その後はBADHOPやJJJ、C.O.S.A. など様々なラッパーの作品に関わりました。
代表曲・人気曲
・(sic)boy,KM - Heaven's Drive feat.vividboooy
STUTS
これぞまさに“グッドミュージック”と呼びたくなるような、誰が聞いても心地よくなるような音楽でありながら、ベースには“ヒップホップ”がしっかりと感じられる。
そんな唯一無二のビートを作るのが“STUTS(スタッツ)”です。
ビートメイカーとしてだけではなく、武道館でワンマンライブを成功させた人気アーティストでもある“STUTS”。
ライブではMPCプレイヤーを演奏するエモーショナルな姿が印象的です。
また、星野源や松たか子など異なるジャンルのアーティストの楽曲を手がけることでも広く知られています。
人気曲・代表曲
・STUTS - 夜を使いはたして feat. PUNPEE
Koshy
「Koshyあっつー」「Koshy yeah」のプロデューサータグでお馴染みの“Koshy(コッシー)”。
“Wondering Witchクルー”に所属し、ここ数年で一気に台頭してきた若手ビートメイカーです。
ビートメイクを始めたのは2020年。コロナ禍に入って暇になったからという理由からでした。
ラッパーのWatsonらのプロデュースで広く知られ、2024年には大きなムーブメントを引き起こした千葉雄喜の“チーム友達”をプロデュース。
さらに驚かせたのが、世界的ラッパーの“ミーガン・ザ・スタリオン”の3rdアルバム「MEGAN」の収録曲“”Mamushi (feat. Yuki Chiba)”のプロデュースを担当というビッグニュース。
今後の動向が楽しみな、2024年もっとも勢いにのるビートメイカーです。
代表曲・人気曲
・千葉雄喜 - “チーム友達”
Homunculu$
現代のヒップホップで新たな主流のひとつとなった“drill(ドリル)”ビートの名手といえば“Homunculu$(ホムンクルス)”です。
“drill”が日本で広まってきたのは、2020年ごろからと世界的には少し遅れていました。
和歌山のプロデューサー“Homunculu$”はその頃から現在にいたるまで、様々なラッパーにDrillビートを提供し続けています。
有名どころをあげると「ラップスタア誕生」でも話題になった“7”や、“Jin Dogg” に“Young zetton”、そして現在もっとも旬なラッパー“Watson”。
このほかにも“Homunculu$”の周りからは、彼らよりもさらに若い“drill”を乗りこなすヤバいラッパーがどんどん生まれてきています。
代表曲・人気曲
・Jin Dogg - " OMG "
JJJ
Fla$hBackSのグループでの活動、そして今はソロラッパーとしての人気の“JJJ(ジェイジェイジェイ)”は、才能あるビートメイカーとしても有名です。
“サンプリング”を主な手法として生み出されるビートは非常に個性的で、聞いたものは一発で「“JJJ”のビートだ」とわかる独特のグルーヴを持っています。
もともとはブーンバップを主体としていましたが、近年はドリルやジャージークラブ、グライムや2ステップなどUKのスタイルを独自に消化した自分だけのサウンドをつくり出しています。
代表曲・人気曲
・Eye Splice
BACHLOGIC
2000年代後半からの約10年間、そのころの日本のヒップホップ界といえば、完全にBACHLOGIC(バックロジック)の時代でした。
総合プロデュースを手がけた2006年発表の“SEEDA”の2ndアルバム「花と雨」で大きく名を上げると、そこから大ヒット曲を連発。
自身が主宰をつとめるレーベル「One Year War Music」からは“AKLO”と“SALU”という新世代ラッパー2人を世に出し、その他にもZORNやNORIKIYO、KREVAなどの人気ラッパーに楽曲を提供し続けました。
“鋼田テフロン”名義でシンガーとしても活躍しており、数多くのヒット曲に参加しています。
現在もシーンでも指折りのヒットメーカーとして、数々の人気曲を提供しています。
代表曲・人気曲
・SEEDA - 花と雨
DJ RYOW
名古屋を拠点に、25年以上のキャリアをほこるベテランの“DJ RYOW(ディージェーリョウ)”。
AK-69や"E"qualのライブDJをつとめたり、数多くのDJ ミックス作品を発表していますが、ビートメイクにも定評のあるDJです。
2004年に急逝した伝説のラッパー“TOKONA-X”の名曲を新バージョンで制作した楽曲が大きな話題に。
また、近年は同じ東海出身のラッパー“¥ellow Bucks”と組んで楽曲を制作したりと、ここにきてより一層精力的な活動でシーンを盛り上げているビートメイカーです。
代表曲・人気曲
DJ RYOW WHO ARE U? feat. TOKONA-X
Lil'Yukichi
「Lil'Yukichiあかんわ」というユニークなネームタグで知られる“Lil'Yukichi(リルユキチ)”。
ラッパー“Cherry Brown”としても活動していましたが、2018年にラッパーとしての活動を終了。
以後、SALU,BAD HOP,KOWICHI,OZworld,Red Eyeなどさまざまなラッパーにビートを提供する、シーンに欠かせない重要人物となっています。
代表曲・人気曲
・DJ CHARI & DJ TATSUKI - Best Way 2 Die feat. Jin Dogg, LEX & YOUNGBONG
Foux
Koshyと共に2024年現在もっとも勢いのあるプロデューサー、“Foux(フォークス)”。
ポーランドのワルシャワ出身で、母国ではトッププロデューサーとして数々の賞を受賞。現在は東京に拠点を移して活動しています。
盟友のTokyo Young Visionの他、BADHOPやOZworld、LEXらの作品をプロデュース。
今後さらなる活躍が期待される注目の人物です。
代表曲・人気曲
・OZworld / Gear 5 feat. ACE COOL & Ralph
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その他のビートメイカー
ここまで12名のヒップホップトラックを作るビートメイカーを紹介してきましたが、当然それ以外にも優れたビートメイカーは数多くいます。
- “Ralph”の楽曲で知られる“Double Clapperz's”。
- 変態紳士クラブなどを手がける“GeG”
- “KOHH”との数々の楽曲で知られる“理貴”
- “唾奇”や“Jinmenusagi”などのプロデュース作品が人気の“Sweet William”
- “CreativeDrugStore”のメンバーで、かつ優れたビートメイカーとしても知られる“VaVa”
- “Leon Fanourakis”などの横浜の同世代ラッパーと共に頭角を現した“YamieZimmer”
- 舐達麻のトラックを手掛ける““GREEN ASSASSIN DOLLAR”
- 個性豊かなビートで独自の世界をつくり上げる“OLIVE OIL”や“EVISBEATS“
- ベテランになった今も精力的にビート提供し続ける”DJ MITSU THE BEATS“や”DJ WATARAI“に” I-DeA“
- 他にも”タイプライター“、“BUDAMUNK”、“YMG”
などなど上げればキリがありません。
また、日本のヒップホップ界の礎をきずいた偉大なレジェンドたちの存在も忘れるわけにはいかないでしょう。
まとめ
今回は日本のヒップホップを支える優れた“ビートメイカー”について紹介しました。
いかがだったでしょうか?
もし今まで知らなくて気になるビートメイカーがいましたら、リストにあげた曲から聞いて行ってみてくださいね!