あなたは日本語ラップの歴史について詳しいですか?
過去にどんなラッパーたちがいて、どんな名盤が出され、どのように音楽像が変化してきたのか?
「まだ詳しくないから知りたいけど、あまりに膨大な作品があって、一体どこからどう手をつけていいか分からない。」
もしあなたがそんな思いをお持ちでしたら、ぴったりな一冊があります。
今回はそんな本を紹介したいと思います。
日本語ラップの始まりから現在までの歴史を一冊で学べる本の紹介です。
その本は2022年に出版された、批評家でライターの韻踏み夫さんが書いた「日本語ラップ名盤100」です。
この本は単なるディスクガイドではありません。
この一冊をガイドにして聴き進めていけば、日本語ラップの歴史を語る上で欠かせないラッパーたちを全て知ることができるのはもちろん、どのようにシーンが移り変わっていったのか、音楽的にどのような変化を辿って今の形になったのか分かります。
著者は100枚を選出する上で、ただ名盤を並べるのではなく、そのラインナップを通じて日本語ラップの全体像を広く浮かび上がらせることを意識したそうです。
わたしは今までに日本語ラップに関して書かれた書籍をかなり読んできました。
筆者が巻末に本書を書くために参照したというリストをのせていますが、その大半に目を通しています。
その上で、この本が日本語ラップの歴史を理解するのに最良の一冊だと言い切ります。
ここからこの本の概要と、おすすめするポイントをあげて紹介していきますね。
目次
「日本語ラップ名盤100」とは
著者紹介
本書を書いたのは「韻踏み夫」さんという批評家でライターをされている方です。
1994年福岡県生まれで、早稲田大学在学中に「韻踏み夫による日本語ラップブログ」を立ち上げ、日本語ラップに関しての様々な文章をあげていたところ、雑誌社から声をかけられ批評文を載せたことをキッカケにライターの道へ。
現在は福岡を拠点にしつつ、様々な媒体に記事を執筆するだけでなく、日本語ラップに関して語るトークライブなどにも出演しています。
概要
1枚目の1987年に出された、President BPM featuring TINNIE PUNX and F.O.E.「Heavy」から、ラスト100枚目の2022年発売のAwich「Queendom」まで、35年間にわたる日本語ラップの歴史の中から100枚を選出し、見開き2ページにわたるレビューと、その1枚の関連盤として2作品ずつ取り上げる構成で、計300枚が紹介されています。
日本語ラップの歴史35年間から、1985-1999から16作品、2000-2004から22作品、2005-2009から28作品、2010-から34作品、このように4つの時期に分け、その時期に発売された盤の中から重要作品を選出しています。
その中の一部を紹介すると
【I 1987-1999】
出典:イーストプレス社公式HP
スチャダラパー『5th Wheel 2 the Coach』:ハードコアを気どる者を黙らせたドープな一枚
キングギドラ『空からの力』:日本語ラップの教科書
THA BLUE HERB『STILLING, STILL DREAMING』:北の僻地からの声が日本語ラップのパラダイムを変えた
Shing02『緑黄色人種』:ポエトリー・ラップの先駆者
【II 2000-2004】
BUDDHA BRAND『病める無限のブッダの世界』:史上最も偉大なグループの、最も偉大な作品
OZROSAURUS『ROLLIN' 045』:「レペゼン」とはなにか?
RIP SLYME『FIVE』:日本語ラップ随一のパーティー・ラップグループ
ECD『失点インザパーク』:孤高のラッパーが残した日本語ラップの最前衛
姫『姫始』:「日本人・女性・ラッパー」はいかにして可能か?
【III 2005-2009】
SEEDA『花と雨』:日本語ラップを決定的に変えた名盤
サイプレス上野とロベルト吉野『ドリーム』:高いヒップホップIQで日本語ラップ史の伝道する
SHINGO★西成『SPROUT』:日本語ラップのワーキング・クラス・ヒーロー
COMA-CHI『RED NAKED』:ヒップホップ・フェミニズムのはじまり
METEOR『DIAMOND』:独特なストーリーテリングが光る小説的ラッパー
【IV 2010- 】
SIMI LAB『PAGE 1』:日本語ラップが目指したふたつの方向の合流点
LBとOtowa『インターネットラブ』:ヒップホップの「現場」はネット空間にも
KOHH『DIRT』:日本語ラップの夢「世界で勝負」を無邪気にはたす
tofubeats『lost decade』:ヒップホップの手法で「失われた未来へのノスタルジー」を鳴らす
Awich『Queendom』:「まさか女が来るとは」現在のシーンの頂点に君臨
この本をおすすめする理由
1 他にこういった本がなかった
いきなり身もふたもない理由をあげてしまいましたが、シンプルにこういった本が今まで無かったのです。
筆者も言っていますが、実はこういった日本語ラップの歴史を全て網羅したディスクガイドというのは、今までほとんど出ていないのです。
該当するものとしては、筆者が参考文献としてあげている「blast JAPANESE HIP HOP DISC-GUIDE」(2012)や、音楽雑誌「ミュージック・マガジン」が2017年6月号で特集した「日本のヒップホップ・アルバム ベスト100」くらいでしょうか。
前者は発行から年月がたっているという点と、レビューされている盤が350枚もあり、入門書としては勧めにくい物です。
また、後者は100枚とコンパクトにまとめられていますが、識者30人ほどにアンケートを取り、それをそのままポイント順に選ぶという少々強引なものであり、実際かなりの不評を買いました。
そんな中この本が出版されたことは、「こういう本があれば良いんだけどなあ」と考えていた私にとって、嬉しい出来事でした。
筆者がこの本をどういった意図で作ったのか、どういう構成になっているのかについては、序文で語られていますので、本文から引用させて頂きます。
(前略)日本語ラップとはなにかを知りたい新しいリスナーのために、入門書として書かれたのが本書だ。この本は、日本語ラップの名盤を100枚選出し、年代別に並べ、それにレビューを付したもので、さらに関連盤が2作品づつ紐づけられている。
いうまでもなく、日本語ラップを知るためには、優れた作品に実際に触れられるのが一番早い。
私の文章なんかよりも、ここに選ばれた名盤100枚たちのほうが、雄弁に多くを語ってくれることは間違いない。
しかし、それだけでは物足りない気持ちになることもあるだろう。
そうしたときのヒントに、私の書いたレビューが役に立てば、これほどライター冥利に尽きることはない。
また、もっと他の作品が聞きたくなったら、その導線になるよう、各作品の関連盤を示し、また巻末には索引もついている。
出典:「日本語ラップ 名盤100」韻踏み夫
2 誰もが挙げるクラシックから全体像を把握するための作品まで幅広く選出している
これまでに出た日本語ラップ全ての作品の中から100枚を選出するというのは、想像するだけで頭が痛くなりそうな作業ですが、筆者は選出する際のポイントとして次をあげています。
- できるだけ好みを排して、誰もが納得できるような、オーソドックスで一般的な選考基準を心がけること。
- 日本語ラップの全体像を広く示すこと。定番の作品だけではなく、そこからこぼれ落ちる作品まで取り上げ、100枚の作品が互いに共鳴、反発し合うようなダイナミズムを演出する。
- 多角的な評価軸を導入する。ヒップホップとして聞くかポップミュージックとして聞くか、音楽か文学か、リアルタイムの評価と現在の視点からの再評価、日本における評価と世界での評価、評価軸をどれかひとつに絞らないようにする。
私は最初に100枚のリストを見た時に、新鮮な驚きを感じました。
今まで見てきたこういう類のリストとは、一風変わったラインナップだったからです。
といっても8割強〜9割弱くらいのものは、「まあ入ってくるだろうな」もしくは「なるほど、ここに入っていても違和感はないな」という類の定番の作品が入っています。
新鮮なのはその他の作品です。そこに筆者の意図を感じました。
その中でも特に目立つのが、女性ラッパーの作品です。
RUMIやCOMA-CHIなどの有名どころのみならず、不勉強ながらその存在すら知らなかったようなラッパーや、名前しか聞いたことのないラッパーの作品が複数入っていました。
たとえ当時のシーンの中で中心にいなかったとしても、たしかに先駆者として戦っていた彼女たち。
彼女たちのような存在が、スター的な女性ラッパーが何人もいる現在のシーンに繋がっている。
著者からのそんなメッセージを感じました。
他には、バンド形式でのヒップホップを追求したもの、アンダーグラウンドシーンで生まれた重要作、音楽的に広がりをもたらした作品など、必ずしも当時のヘッズ皆が聞いていたわけではない盤が入っていました。
これは筆者の選出ポイントとして挙げていたうちの、「日本語ラップの全体像を広く示すこと」と、「現在の視点からの再評価」という観点から入れられたものなのでしょう。
それによってただ名盤を集めただけのディスクガイドとはならず、日本語ラップの歴史全体を総括するようなものたり得ているのだと思います。
3 歴史的な文脈や派生するストーリーまで含めた有機的なレビューとなっている
3点目は少しわかりにくい言い回しになってしまいましたが、本書の各作品のレビューの最大の特徴は、個別の作品内にとどまることなく、その作品が生まれた時代の状況とシーンに与えた影響までを含めた、広がりのあるものとなっていることです。
さらに、関連盤として紹介される2作品も、単にそのラッパーの他の作品や客演で参加した作品を取り上げるのではなく、過去や未来にわたって文脈を共有するラッパーたちの作品を並べることで、作品単体としてではなく、より広く横断的に日本語ラップの歴史を見渡せるものとなっています。
2010年代の作品のレビューを読んでいたら、関連版として90年代の作品が紹介されたり、メディアからリスナーから同じような位置づけとして見られていたラッパーの作品が紹介されたりと、縦横無尽に広がる日本語ラップの海を泳ぐ楽しさが味わえます。
まとめ
いかがでしたか? この本の魅力を少しでも使えることが出来たでしょうか?
もし、興味を持っていただけたのなら、ぜひ実際に読んでみてください。
今まで自分が聞いてきたラッパーのあの作品が、歴史的にどんな文脈をもっているのか? 過去のあのラッパーの作品とどんな繋がりがあるのか? 色んなことが立体的につながり、今までよりもいっそう楽しく聞くことが出来るでしょう。
もちろん、今まで名前しか知らなかったラッパーたちの素晴らしい作品を聞く楽しみも味わえます。それもその作品単体としての素晴らしさだけではなく、日本語ラップ史の中での重要性も理解しながら。
これらの事は、ただやみくもに聴き漁るだけでは得られない喜びです。
ぜひ、この本をお供に日本語ラップの世界を探求してください!
他の記事では、アメリカのヒップホップを学べる最良の1冊や、MCバトルの歴史を学べる本を紹介しています。
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