2024年現在、日本にはシーンの中心で活躍する女性ラッパーたちが大勢いますが、これは極めて異例のことであり、これまでの歴史ではそうではありませんでした。
別の記事で2024年現在のシーンで活躍する女性ラッパーを紹介しています。→【2024年最新】日本のシーンを席巻する女性ラッパー達を紹介!
2010年代に入ってからは、今のシーンでも活躍する女性ラッパーが活動を始めるなど状況は良くなりましたが、90年代や2000年代は女性ラッパーの存在自体がめずらしいものでした。
女性のラッパーのことを“フィメールラッパー”(female rapper)とも呼びますが、この記事では“女性ラッパー”で統一します。
しかし、今女性ラッパーたちが活躍できるシーンがあるのも、言うまでもなく彼女ら先人たちがいたからです。
そこでこの記事では、90年代、2000年代という女性ラッパー冬の時代を生きたラッパーたちにについて紹介していきます。
必ずおさえていくべき重要な人物にしぼって紹介します。そこから外れた人はその他の項目で補足しています。
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90年代
YURI
まずはじめに紹介するのは、YURI(ユリ)です。
『DA.YO.NE』が大ヒットした“EAST END×YURI“のYURIと言えば、ある世代までの人はヒップホップに詳しくなくてもわかるかと思います。
1972年東京生まれの”YURI“こと市井由理は、もともとはラッパーではなく”東京パフォーマンスドール”(以下、TPDと称する)というアイドルグループでデビューしたアイドルでした。
1992年、“TPD”のスピンオフ企画としてのソロ活動で、ラップパートを含む『おちゃめなジュリエット』を発表。
1994年のグループ脱退後は、以前から活動していた“EAST END×YURI“を本格的に始動。
1stシングル『DA.YO.NE』は日本のヒップホップ曲で初となるミリオンセラーを記録し、同曲で紅白歌合戦の出場もはたしました。
2ndシングル「MAICCA〜まいっか」もミリオンセラーを達成。
1997年にアーティスト活動を休止してからは、ごくたまにスポット的な活動をするのみで表だった舞台には立っていません。
HAC
つづいて紹介するのは、伝説のイベント・「さんピンCAMP」のステージに立った唯一の女性ラッパー“HAC”(ハック)です。
当時の日本のヒップホップシーンというのは非常にコアでアングラなものであり、ヘッズたちが厳しい目線で各ラッパーたちをジャッジしているような世界であり、女性ラッパーにとっては今とは比べようもないほどキツい環境だったと伝え聞きます。
「さんピンCAMP」の映像を見るとわかるのですが、このイベントのステージには集団で立った人たちがほとんどで、“HAC”のように1人でステージに立った人はわずかでした。
これだけでも“HAC”がいかに凄いことをやってのけたのか評価されるべきでしょう。
彼女の代表曲として最もよく聞かれているのは“SPECIAL TREASURE ”。
不思議な中毒性を持つ曲として、2024年の今でも人気がある1曲です。
その他
90年代で必ず触れなければならないのは上記の2人ですが、この他にも95年にDJ KENSEIプロデュースのもとソニーからメジャーデビューした“RIM”(リム)。
90年代後半から名古屋を拠点に活動した女性2MCによるグループ“NOCTURN”(ノックターン)らが活躍していました。
2000年代
RUMI
【2024年最新】日本のシーンを席巻する女性ラッパー達を紹介!という記事の中でも【レジェンド枠】として紹介しました。
その中では彼女の功績を、初めてシーンの誰もが認めるプロップスを得た女性ラッパーという一言でまとめました。
高校時代からラップを始め、1996年に同じ高校にいた“YOSHI”(後のソロラッパー般若)と”DJ BAKU”と共に「般若」というグループを組み、2年の活動の末グループを解散し“RUMI”も活動を休止します。
充電期間を経たのちに自身のレーベルを立ち上げ、2004年にソロデビュー。
活動再開した時期からは、“漢 a.k.a. GAMI”らが属した「MSC」(エムエスクルー)との距離がちかく、数々の客演をこなします。
フリースタイルの名手としても知られた彼女は、2008年の「UMB東京予選トーナメント」で勝ち上がり、決勝で般若と今でも語り継がれる“名勝負”をくり広げました。
ちなみにこの大会では1回戦から順に“DARTHREIDER”、“ISSUGI”、“ZONE THE DARKNESS(現・ZORN)というもの凄いメンツを破っています。
彼女がすごいのはフリースタイルの方面だけでなく、しっかりと音源をコンスタントにリリースして、楽曲としても評価されていたことです。
特に2009年に出した3rd アルバム「Hell Me Nation」はクラシックとしてシーンに迎え入れられました。
代表曲としては、その3rd アルバムに収録された“A.K.A”がもっとも有名です。
姫
姫は1998年に結成した八王子をレペゼンするヒップホップクルー“NARSISTER”のメンバーであり、2001年からソロ活動を開始したラッパーです。
2003年に世界的に有名なレジェンドDJである“dj honda”に見いだされ、彼のプロデュースによりデビューアルバム「姫始」をリリース。
2004年に2ndアルバム「浮き名」、2006年に3rdアルバム「一暦」とキャリアで3枚のソロアルバムを出しました。
かなりイケイケで“姉さん”的なキャラクターだった姫。
彼女のラップスキルは当時としては非常に高く、固いライミングも特徴的でした。
高い実力をほこった彼女ですが、知名度や売り上げはそれほど伸びず、2006年のリリース以降おもてだった活動はとぎれてしましました。
1stアルバム「姫始」に収録された“姫始”をオススメ曲としてあげさせて頂きます。
ANTY the 紅乃壱
2000年代の女性ラッパーといえば、とかく“RUMI“やこの次に紹介する”CO-MA-CHI“の2人が語られることが多いのですが、本来なら同列にならべて扱わなければならない重要な人物がいます。
それが“ANTY the 紅乃壱”(アンチ・ザ・クノイチ)です。
名古屋を拠点に活動した彼女は、名古屋弁を駆使した巻き舌ぎみのまくし立てるラップを得意としたため、「女版TOKONA-X」とも呼ばれました。
低く力強い声でさまざまなテーマに関してハッキリと物申すといったスタイルで人気をはくした彼女は、多くの一線級のラッパーと共演し、一時代を築きました。
これまでに5枚のアルバムをリリースした後、現在は自身が主宰をつとめるレーベル「MADD CAT」に所属し、アーティスト名を“ANTY the KUNOICHI”としています。
CO-MA-CHI
これまで紹介した90年代、2000年代という女性ラッパー冬の時代を経てたどり着いた一つの“完成形”ともいえるのが、最後に紹介する“CO-MA-CHI”(コマチ)です。
はじめにMCバトルで頭角を現した“CO-MA-CHI”は、2005年の「B-BOY PARK MCバトル」にて準優勝という快挙をなしとげました。
その後2006年リリースの1stアルバム「Day After Blue」に収録された“ミチバタ”がヒットや、さまざまな客演仕事で、シーン内のプロップス着々と高めていきました。
そして2009年に満を辞してメジャーデビューアルバム「RED NAKED」をリリース。
この作品が“史上最高のフィメール・ラップ作品”としてクラシック認定されました。
ボーカリストとしての基本的な声の良さ、ライミング、フロウ、グルーブ感、フリースタイルの技術など全てをかね備えた“CO-MA-CHI”。
女性ラッパーとしての最高到達点にたった彼女は、以後出産育児などを経ながらも現役として今も活動しています。
“B-GIRLイズム”や“name tag”など人気曲の多い彼女ですが、ここでは当時の彼女のいきおいが伝わるMVが印象的な“東京非行少女”をあげときます。
その他
2000年代には他にも横浜を拠点にメッセージ性の強いラップをした“BRIER”(ブライヤー)
RIP SLYMEのRYO-ZとDJ FUMIYAがプロデュースして人気を博した2MCユニット“HALCALI”(ハルカリ)
湘南を中心に活動した女性ラッパー“真衣良”(マイラ)
ごく普通の女の子の繊細な気持ちを歌ったラッパー“COPPU”(コップ)などがいました。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は90年代、2000年代に活躍した女性ラッパーについて紹介してきました。
この後の流れとしては、2009年に現在もソロとして活躍する“MARIA”(マリア)が、相模原を拠点に活動するクルー・Simi lab”(シミラボ)のメンバーとしてシーンに現れます。
2010年代の中ごろ以降は、日本のヒップホップシーンの盛り上がりとともに様々な人気女性ラッパーが台頭。
そして2024年現在、シーンの中心で活躍する女性ラッパーの数と質が最高潮をむかえています
そちらに関して別の記事で書きましたので、興味がある方は読んでみてください。
【2024年最新】日本のシーンを席巻する女性ラッパー達を紹介!
2010年代に活躍した女性ラッパーたちに関しても、需要があれば今後紹介するかもしれません。
これからも女性ラッパーたちの活躍を見届けていこうと思います。
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